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本番前3か月の仕上げ方

走り始めて半年。
ようやく「マラソンを走る自分」が現実味を帯びてきた。
最初は1kmも苦しかったのに、今では10kmが“ちょうどいい距離”に感じる。
あの頃の自分が見たら、きっと驚くだろう。

だが、ここからが本当の勝負だ。
本番まであと3か月。
焦りと不安が入り混じる時期でもある。

「距離を伸ばす」ではなく「体を仕上げる」

この時期、走る距離をただ増やすのは危険だと学んだ。
無理に20km、30kmをこなしても、疲労が抜けなければ意味がない。
むしろ、ケガで走れなくなるリスクの方が怖い。

だから僕は「距離」よりも「質」を重視するようにした。
1回のランを長くする代わりに、ペースを一定に保つ。
時計を見ずに、呼吸のリズムだけで走る。
「息が乱れないスピード」が、僕にとっての理想ペースだ。

この走り方を覚えると、不思議と長く走っても疲れにくくなる。
42.195kmは、速さより“呼吸の安定”が鍵だと気づいた。

ロング走は「孤独の練習」

月に一度、僕は20kmのロング走をする。
距離を伸ばすことより、「長い時間、自分と向き合う」ことが目的だ。
2時間以上走っていると、体の疲れよりも“心の声”が大きくなる。

「なんで走ってるんだろう?」
「もう歩いたっていいじゃないか」

そんな声が聞こえてくるたびに、僕は静かに答える。
「それでも前に進もう」。

30kmの壁とは、単なる体力の限界ではなく、
心の中に現れる“もうやめたい自分”との戦いだ。
この孤独な時間を、僕は少しずつ楽しめるようになってきた。

疲労を抜く勇気 ― テーパリングの意味

走る量を減らすことに、最初は抵抗があった。
「せっかく積み重ねてきたのに、ここで休むのか?」
そう思った。

でも、疲労を抜くことは決して“サボり”ではない。
筋肉は、走っている時ではなく、休んでいる時に強くなる。
走らない日を設けることで、体が回復し、より走れるようになる。

テーパリング期間(レース前の2〜3週間)は、
走りたい気持ちをあえて抑える時間だ。
まるで“弓を引いて矢をためる”ような感覚。
焦らず、エネルギーを貯める。
僕はその期間を、「静かな充電期間」と呼んでいる。

本番を意識した体づくり

この時期、食事にも少し工夫を加えた。
長距離練習の日は炭水化物を意識的に増やす。
翌日はたんぱく質で修復。
体重は減らしすぎず、むしろ“スタミナのための体”を作る。
60代の体は、削るより「満たす」ことが大切だ。

前夜のメニューは、定番の「うどん+おにぎり」。
胃にやさしく、エネルギーが持続する。
地味だけれど、僕にとっては“レース前の儀式”になっている。

心を静め、体を信じる

本番まであとわずか。
走ることが怖くなくなった。
代わりに、不思議な落ち着きがある。
今の僕にできることは、もうすべてやってきた。

あとは、当日を迎えるだけ。
風が吹こうが、雨が降ろうが、もう逃げない。
この半年間、走るたびに積み重ねた一歩一歩が、
きっと僕をゴールまで運んでくれる。

“準備とは、自分を信じる力を育てること。”
この3か月で、僕はその意味をようやく理解した。