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ウォーキングから始める安全トレーニング法

走りたい気持ちは山ほどあった。
でも、現実の身体はそう簡単にはついてこない。
最初のうちは、1km走るだけで息が上がり、翌日は太ももが張って階段を降りるのもきつかった。
「このまま続けて大丈夫か?」と不安が頭をよぎった。
そんな時に出会った言葉がある。
“走る前に、歩け”。

調べてみると、多くのランニングドクターが口をそろえて言う。
「還暦ランナーは、ウォーキングから始めるのが一番安全」。
その言葉を信じて、僕は走ることを一旦やめ、まず“歩く”ことにした。

歩く勇気を持つ

最初は正直、少し悔しかった。
「走る」と宣言したのに、歩くことから始めるなんて。
でも、歩いてみて気づいた。
ウォーキングは“地味”じゃない。むしろ“深い”。

朝、まだ空気がひんやりしている時間に歩き出す。
1歩1歩、足の裏が地面をつかむ感覚を確かめながら。
最初の10分で体が温まり、15分を過ぎると呼吸が整ってくる。
風が頬を撫で、遠くで鳥の声がする。
「走らない朝」も悪くないな、と思った。

30分×週4回のリズム

最初の1か月は、週4回・1日30分を目標にした。
タイムも距離も気にしない。
大切なのは“続けること”と“体を慣らすこと”。
少し早歩きのペースで、心拍数が上がりすぎない程度に。

2週間もすると、驚くほど体が軽くなった。
歩くだけで、血流が良くなり、足の裏の感覚が戻ってきた。
姿勢も整い、呼吸が深くなる。
何より、朝のウォーキングを習慣にすると、一日中、頭がすっきりしている。
「体を動かすと、心も動く」というのは本当だった。

ランへの橋渡し「ウォーク&ラン法」

3週目からは、“ウォーク&ラン”を取り入れた。
5分歩いて、1分だけゆっくり走る。
それを3セット。
走ると言っても、ジョギングにも満たないスピード。
でも、これが想像以上に効いた。

走るたびに、膝やふくらはぎの動きを意識できる。
そして、歩く時間で呼吸を整えられる。
「走って、歩いて、また走る」——このリズムが心地いい。
走る距離を伸ばすより、呼吸を乱さないことに集中する。
その方が、長く続けられることに気づいた。

“ゆっくり進む人”が最終的に強い

ウォーキングを続けて1か月、ようやく“基礎体力の芽”が出てきた。
走りたくてうずうずする日もある。
でも、焦らない。
この「ゆっくり進む時間」が、あとで確実に効いてくる。

実際、マラソン経験者の多くが言う。
「急ぐ人ほど途中で止まる。ゆっくり積んだ人が最後まで行く」。
まさにその通りだと思う。
僕のフルマラソン挑戦は、派手さのない“地味な30分ウォーク”から始まった。
でも、あの時間があったからこそ、今も続けられている。

一歩の積み重ねが人生を変える

朝の光の中を歩きながら、時々思う。
「人生もマラソンも、早くゴールすることが目的じゃない」と。
一歩ずつ、地面を踏みしめながら、自分のペースで前に進む。
その繰り返しが、いつの間にか“走る力”を育てていく。

ウォーキングは、ただの準備運動ではない。
それは、再び走るための“心と体のリハビリ”だ。
僕はそのことを、この1か月で深く学んだ。