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フルマラソン完走の現実 — 目標設定と覚悟

「走る」と決めたはいいが、最初に直面したのは“現実”だった。
想像していたよりも、僕の体ははるかに正直だった。
最初の1kmで息が上がり、膝が重くなった。
スマートウォッチに表示された心拍数は、すぐに150を超えた。
「これで42kmなんて、到底ムリだな」
正直、そう思った。

けれど、諦めたくなかった。
だから、現実を受け入れて、目標を立て直した。
僕がまず決めたのは、「完走」ではなく「完歩」だった。
どんな形でも42.195kmを自分の足で進みきること。
それを半年後のゴールに据えた。
最初から完璧を求めるより、続けることを最優先にしたのだ。

そしてもう一つ決めた。
「タイムよりも継続」。
速く走るよりも、習慣にすることの方がずっと難しい。
1日20分でもいい。
仕事の前や帰宅後、少しでも体を動かす。
その積み重ねこそ、還暦ランナーの最大の武器になる。

計画はシンプルにした。
最初の1か月は「歩く日」を中心にして、週に3〜4回。
心拍数を上げすぎないように、呼吸を意識しながら歩く。
2か月目に入ったら、1kmだけ走ってみる。
呼吸が苦しくなったら、すぐ歩く。
無理に我慢せず、「止まらずに進み続ける」ことを自分に課した。

1か月後、最初の3kmランを達成したときの感動は今でも覚えている。
息は荒いし、汗も滝のように出た。
でも、走り終えた瞬間、心の中で何かが変わった。
“もうダメかもしれない”と思っていた体が、少しずつ応えてくれている。
「やればできる」という感覚を、久しぶりに味わった。

ただ、現実は甘くない。
膝の違和感、ふくらはぎの張り、翌日の疲労感。
どれも年齢と向き合わざるを得ないサインだ。
だから、焦らず、ケアを最優先にした。
ストレッチ、マッサージ、睡眠、栄養。
若い頃なら気にも留めなかったことを、一つひとつ丁寧にこなす。
それが“還暦のトレーニング”だと思う。

ある日、ランニング仲間に言われた言葉が胸に残っている。
「マラソンは、速さじゃなくて“続ける勇気”の競技だよ」
その言葉を聞いて、肩の力が抜けた。
僕はもう若くない。でも、心はまだ折れていない。
それで十分だと思えた。

目標を立てることは、人生をもう一度デザインすることだ。
半年後の大会で完走できるかどうかはわからない。
でも、挑戦する日々の中で確実に変わっていく自分がいる。
走ることが、単なる運動ではなく、生き方そのものになり始めている。