記事画像

なぜ今、走るのか — 還暦から始まる新たな挑戦

60歳を迎えたとき、ふと「このままの自分でいいのか」と思った。
仕事も家庭も、ひと段落ついた。
健康診断の結果を見て、「年齢相応です」と言われたとき、なぜだか少し悔しかった。
“相応”でいいのか? いや、まだ何かできるんじゃないか——。
そんな気持ちが、心の奥で燻っていた。

そしてある日、ニュースで見た。
70歳の男性がフルマラソンを完走して、笑顔でゴールしている映像。
「この人、すごいな」と思った。
でもすぐに「自分だって、やってみたい」と思っていた。
気づけばスマホで「還暦 マラソン 初心者」と検索していた。

若い頃は、走るなんて好きじゃなかった。
むしろ苦手だった。
だけど、還暦の今は違う。
走ることが、“挑戦”になる。
誰かと競うわけじゃない。
自分の心と体が、まだどこまでやれるのかを確かめたい。
それが今の原動力だ。

42.195kmなんて、想像しただけで途方もない。
でも、不思議と怖くはない。
むしろワクワクする。
だって、これから半年かけて、もう一度「自分を作り直す」ことができるのだから。
筋肉も、心肺も、食生活も、全部リセットして鍛え直す。
まるで人生の総点検みたいだ。

走ることは、自分と対話する時間だと聞いた。
きっと最初は苦しいだろう。
息が上がり、足が重くなり、何度も歩いてしまう。
でも、そのたびに思うはずだ——「まだ、ここからだ」と。
少しずつ距離が伸び、風を切って走る感覚を取り戻したとき、きっと若い頃にはなかった達成感がある。

還暦と聞けば、多くの人は「もう若くない」と言う。
けれど、僕は違うと思う。
60歳は、“もう一度始める年齢”だ。
人生の暦が一巡し、ゼロに戻る。
ならば、もう一度、生まれ直して走り出せばいい。

この歳で挑戦するのは、無謀かもしれない。
けれど、挑戦しないまま終わる人生の方が、ずっと寂しい。
フルマラソンの完走証は、ただの紙切れじゃない。
「まだやれる」という、自分への証明書だ。

だから僕は走る。
心臓が動く限り、足が前に出る限り、走る。
還暦の自分を超えるために。
そして、これからの人生を、もう一度自分の手で作り直すために。